2024/08/27 12:23

現在イタリアでのアフリカ豚熱発生を受け、日本はイタリア産非加熱豚肉製品の輸入を停止しています。そのため当店も現在パルマ産プロシュートをはじめすべてのイタリア産サルーミが欠品となっております。



本記事では世界三大生ハムの中でも日本で非常に人気の二種類、イタリア産プロシュート・ディ・パルマとスペイン産ハモンセラーノについて、その製法や味わいを比較、ご紹介します。


◆世界三大生ハム

まずは世界三大生ハムについておさらいをしてみましょう。三つのうちの二つは今日取り上げるイタリアで作られている生ハム、プロシュット・ディ・パルマと、スペインで生産されているハモン・セラーノ。
そしてもう一つは中国・浙江省の金華地区で生産される金華火腿(きんか かたい)。日本では一般的に金華ハムと呼ばれている生ハムです。中国では食材を生で食する習慣がなかったため、金華ハムはイタリアやスペインの生ハムのように薄くスライスしてそのまま食べることは無く、主に料理の味だしとして具材に加えたり、高級スープであるシャンタンの素材として使われていました。
その金華火腿も近年欧米中心に西洋の生ハムのように薄くスライスして食べられるようになってきました。


◆ハモン・セラーノの生産地

改良種の白豚の後ろ脚から作られるハモン・セラーノは『セラーノ(山の)=ハモン(ハム)』と呼ばれる通り、元々はアンダルシアやカスティーリャ地方などの山岳地帯を中心に作られていましたが、今日ではスペイン全土で数千にも及ぶメーカーによって製造されています。その中でも有名なのはトレベレスとテルエルと呼ばれる地域で作られるハモン・セラーノ。この二つの地域で製造されたものは原産地呼称制度(D.O.)の認定を受けており、一級品とされています。

スペインの原産地呼称制度(D.O.)とは、品質管理制度のひとつで、独立した国内機関及び生産者団体により施行される厳格な生産ガイドラインと品質基準を満し、かつ特定地域においてその地域特有の原料を使い、伝統的に受け継がれてきた製法・加工を行って作られたハモンセラーノをはじめとした生ハムやサラミ、チーズなどの伝統食材の製品にのみ与えられるものです。

そしてスペイン産生ハムでもう一つ忘れてならないのがハモン・イベリコ。イベリア種の黒豚(セルド・イベリコ)、通称イベリコ豚の後ろ脚から作られる高級生ハムです。ハモンイベリコは原料となるイベリコ豚の飼育にも手間がかかり、出荷されるまでの熟成期間も長いためハモン・セラーノに比べ生産量も非常に少なく最高級品とされています。
ギフエロ、エストレマドゥーラ、ロス・ペドローチェス、ウエルバの4つの地域が原産地呼称制度(D.O.)に登録されているハモン・イベリコはハモン・セラーノとは明確に区別されています。そのためスペインの生ハムは原料となる豚が白豚かイベリコ黒豚は判別しやすいよう、蹄をつけたまま流通されるのです。





◆プロシュット・ディ・パルマの生産地

安価なものを含めスペイン全土で生産されるハモン・セラーノに対してイタリアのプロシュット・ディ・パルマはさらに厳格な産地指定の元製造されています。
プロシュット・ディ・パルマの産地はもちろんイタリア、エミリア・ロマーニャ州の中にあるパルマ県。しかもそのパルマ県の中でもパルマハムを作る認定生産者はエミリア街道から5km以上南に離れた場所であることと、海抜900m以下、かつエンザ川(東端)及びスティロネ川(西端)に挟まれた地域に位置しなければなりません。

パルマ県の生産指定地域の中でも聖地とされているのがランギラーノ。真のパルマ地区と言われたこともあるランギラーノ村には高級パルマハムを製造する限られたメーカーが集中しています。
この非常に限られた場所特有の気候・環境が最高品質のパルマハムの生産を可能にしているのです。


◆プロシュット・ディ・パルマとハモン・セラーノの製法の違い

プロシュット・ディ・パルマとハモン・セラーノ、ともに塩漬け、乾燥、熟成によって作り出されることに大きな違いはありません。
普通の白豚から作られるハモン・セラーノの熟成期間は最低36週間と定められていますが、長い熟成の物であれば50カ月ほどと非常に幅があります。非常に安価なハモンセラーノなどは熟成が最低限しかされていないものなどもあるため購入の際は注意が必要です。
それに対してパルマ産の生ハムの熟成期間は最低1年間から3年間。スペインの高級ハモンのように5年近く熟成されることはありません。
パルマ産生ハムの詳しい製造方法はこちらをご覧ください。


そして製法で最も大きな違いであるのが豚の皮の有無。これが燻製をしない生ハムを代表するイタリア産プロシュット・ディ・パルマとスペイン産ハモン・セラーノの味わいの違いを生む最大の理由といっても過言ではありません。。

イタリアの生ハムは豚の皮を残したまま塩漬けがなされます。この皮を残すことによって肉自体への塩の入り方が穏やかになり、しっとりした滑らかな食感と程よい塩味を帯びた生ハムに仕上がります。
スペインの生ハムは皮をはぎ取ってから塩漬けがなされます。皮がないことによってしっかりとした塩味が付き、肉の水分が早く抜けることからより肉の味が凝縮した仕上がりとなり、さらにプロシュートより長い熟成が可能となります。

同じヨーロッパの、しかも比較的近い二つの国の生ハムでも全く別の味わいが楽しめます。たまには二種類の生ハムを同時に食べ比べてみるなんてのも面白そうですね。