2024/09/01 12:47
グラナパダーノチーズとパルミジャーノ・レッジャーノチーズ。
とてもよく似たこの二つのチーズですが、一体どのように違うのでしょうか。
本記事では当店でも販売をしているこの二種類のイタリア産チーズの違いについて詳しくご紹介します。
グラナパダーノとは
まずは日本での知名度はいまいちなグラナパダーノ。
実はイタリアで流通するハードタイプチーズの50%以上をこのグラナパダーノが占めており、世界への輸出額もパルミジャーノ・レッジャーノチーズの二倍、ヨーロッパ向けに関しては三倍近くあります。
つまり日本ではいまいちマイナーなグラナパダーノチーズですが、イタリアはもちろん、ヨーロッパ諸国では最もポピュラーと言っても過言ではないチーズで、イタリアの食卓には欠かせないチーズでもあります。
実は日本のイタリア料理店でもパルミジャーノ・レッジャーノチーズより遙かにグラナパダーノチーズを使います。
グラナパダーノチーズは粉チーズにして使うのが一般的で、イタリア同様パスタやピッツァにはなくてはならない存在です。
そんなグラナパダーノの歴史は1000年近く前まで遡ります。
ミラノの郊外のポー河流域が開拓されて牧畜が盛んになり、牛乳が豊富にあった1135年ごろ、キアラヴァッレの修道院で余った牛乳の保存方法として考え出されたチーズというのが定説。
当時は“カゼウス・ヴェートゥス(カーチョ・ヴェッキオ)”と呼ばれていましたが、後にぽろぽろと崩れるチーズの特徴からラテン語で「粒」という意味の“グラーナ”と呼ばれるようになりました。
12世紀から広まっていったグラナ・パダーノの産地はヴェネチア、トレヴィーゾ、トリノ、クーネオ、トレント、ソンドリオ、ボローニャ・・・と北イタリアの33の県にまたがる広大な地域。
対してパルミジャーノ・レッジャーノチーズの産地は上記の県以外のパルマ、レッジョ・エミーリア、モデナ、ボローニャ、マントヴァの5つの県とごく限られた場所でしか生産されていません。
グラナパダーノとパルミジャーノ・レッジャーノの違い
実はグラナパダーノチーズ誕生のからしばらくしてから生まれたパルミジャーノ・レッジャーノですがそのルーツはグラナパダーノで、上記で触れたように最大の違いはその産地にあり、よく似たチーズでありながら産地は厳格に分けて定められています。
では実際、味わいなどはどうちがうのでしょうか。
二つのチーズの味わいに影響を与えるものとしてまずよく言われる違いは脂肪分。
パルミジャーノは一晩置いて脂肪分の一部を分離させた牛乳と搾りたての脂肪分を分離させていない牛乳を混ぜて作りますが、グラナ・パダーノは脂肪分の一部を分離させた牛乳から作ります。
その結果パルミジャーノの方が脂肪分が高いという一般的な定説がありますが…実は栄養価を見るとほとんど変わりません。
次に牛の飼料。
グラナパダーノ、パルミジャーノともに牛の餌は牧草、干し草、わらやその他の穀物や植物がベースとなりますが、グラナパダーノにはサイレージ(サイロで保存した干し草やとうもろこしの粉)が与えられ、パルミジャーノはこれが禁止されています。
サイレージとはサイロで保存した飼料で、保存中に発生する微生物によってチーズの風味に影響を与えると言われています。
そして最も大きなわかりやすいのが熟成期間。
グラナ・パダーノの熟成期間は最低9ヶ月で、スタンダードタイプは9~16ヶ月。長いものだと20ヶ月。
対してパルミジャーノは最低12ヶ月で、平均18~24ヶ月。
当然この期間の違いによって味や香り、食感に違いが出てきます。
そのため比較的熟成期間の短いグラナは穏やかな塩気と甘味が残ったソフトな印象。パルミジャーノはしっかりとした塩気と凝縮した旨みが特徴となっています。
しかしこれはあくまで流通量の多いスタンダードなタイプの話。
長期熟成されたグラナパダーノチーズと最低期間しか熟成されていないパルミジャーノ・レッジャーノではその味の違いさほど大きくならないでしょう。
おすすめの食べ方
当店のおすすめの使い分けとして、グラナはパスタやピザ、サラダなど、塩気は足さずにコクを増やしたい料理や、カルパッチョなど繊細な味わいの料理のトッピングに。
しっかりとした主張のあるパルミジャーノは熟成期間の長いバルサミコやハチミツを添えてチーズそのものを楽しんだり、生ハムとの組み合わせ、どっしりとした味付けの煮込み料理やパスタにすりおろしたりがおすすめです。
この二つのチーズ、イタリアではどちらがいいというわけではなく、それぞれの違いを生かして使い分けられています。
このそっくりなチーズをじっくり食べ比べてみるのも面白いですよ。