2024/02/14 13:11
世界中の美食家の舌を魅了する生ハムの頂点『ハモンイベリコ』
中でも最高ランクのイベリコ豚を原料に作られるのがベジョータの名を冠したものです。
今回はこのハモンイベリコベジョータができるまでについて触れてみたいと思います。
まずスペインの生ハムは原料となる豚の種類によって大きく二つに分ける事ができます。
白豚を原料に作られるハモンセラーノと黒豚であるイベリコ豚を原料に作られるハモンイベリコです。
ハモンセラーノ(Jamón serrano)
ハモンセラーノはスペインで作られる生ハムの大半を占め、比較的安価で日常的にスペインの食卓に上がる生ハムです。
ハモンはスペイン語でハムを、セラーノは『山の』を意味する言葉。
伝統的には山岳地帯で作られていましたが今ではスペインの広域で生産されています。
ハモンイベリコ(Jamón ibérico)
一方イベリコ豚を使ったハモンイベリコはハモンセラーノに比べ極めて生産量も少なく、
熟成期間も長くなります。
原料となるイベリコ豚はイベリア半島で良質な油を含む天然のどんぐりを食べながら広大な土地でのびのびと放牧され育てられます。
このように希少価値の高い豚を使い、伝統ある製法で長期にわたり熟成されるハモンイベリコは世界中の生ハムの中でも最高級品に位置する製品となり、ハモンセラーノと比べてもその香りの複雑さや奥行き、濃い旨味が更に感じられます。
イベリコ豚の頂点“ベジョータ”
2014年、スペイン政府によって新たなイベリコ豚の基準が設けられました。
血統によってランク付けされたイベリコ豚の中でもその純血度と規定された飼育方法を遵守したものだけが最高ランクのベジョータを名乗る事が許されます。
厳しい基準をクリアすることができるイベリコベジョータはスペイン国内でも当然希少で、その生産量はイベリコ豚全体のわずか数パーセント。
ベジョータを名乗るための条件としては主に二つあります。それは餌と放牧。
イベリコベジョータはと殺前の10月から12月に60日以上、デエサと呼ばれるどんぐりの樹が茂る森に放牧(モナタネーラ)され、どんぐりやその他牧草など自然界にあるものだけを食べて枝肉へとされます。
その他のイベリコ豚は人工的な補完飼料の有無や放牧を行わない等の飼育方法によって上からベジョータ、CEBO DE CAMPO (セボ・デ・カンポ)、CEBO(セボ)と三つのランクに分けられます。
ハモンイベリコベジョータになるまで
厳しい基準をクリアしたイベリコベジョータは生ハムであるハモンや頬肉を使ったパパーダ、バラ肉を使ったパンセタ、その他の雑多な部位はサルシチョンやチョリソーといった腸詰類などへの加工されていきます。
それではベジョータから作られるハモンについてみていきましょう。
生ハムはイタリア、フランスを中心にヨーロッパで広く作られる伝統ある食品です。
その製法に関して多少の違いはあれどほとんどの生ハムが同じ作り方となっています。
まず枝肉にされたイベリコベジョータの10~15キロ程度ある後ろ脚がハモンの原料となります。
一部の皮を剥ぎ、丁寧に下処理されたもも肉はまずサラードと呼ばれる塩漬けがなされます。
塩に漬ける期間は原料の大きさによって異なりますが10日ほど。塩は自然の海塩のみを使用します。
規定の日数サラードされたのち表面に付いた塩を洗い流し最初の乾燥工程『ポスサラード』へと移行します。
この一回目の乾燥期間は1カ月から3か月。肉が腐らないようもっとも神経を使う期間でもあり、気温3度、80%以上の高湿度に設定された乾燥室で管理され、この工程で肉の中に塩が浸透していきます。
管理された環境で最初の乾燥終えたハモンは続いて自然乾燥室へと移され半年から1年の時間をここで過ごします。
14度から20度の気温、80%近い湿度を保てるようにこまめに窓を開閉しながら職人が調整します。
最後に移されるのが『ボデガ』とい地下に作られた自然乾燥室。最終的な熟成の段階です。
熟成期間はハモンの等級や大きさによって9カ月から最長48カ月ほど。この長い時間がハモンイベリコの独特で複雑な、凝縮した香りを生み出します。
もちろんその間もハモンに付いたカビを適度に落としたり、表面にイベリコ豚のラードを塗って乾燥を防いだりと職人たちの手間がかけられています。
こうして熟成を終えたハモンイベリコは最終的に品質検査を専門とする職人のカーラという香りの検査によって熟成が十分か判断され、合格した物はラベルを付され出荷されていくのです。